落葉広葉樹(ブナ、ハンノキ、オオバヤシャブシ)、常緑広葉樹(シロダモ、アラカシ)草本(キクイモ)について個葉の光合成速度の時間的経過を測定し、それらから、葉の生涯光合成速度を推定した。ブナ林、ハンノキ林において年間落葉量を測定した。これらから、それぞれの林分における年間二酸化炭素吸収量(総生産速度)を推定した。推定値は従来法によって推定された値の範囲内にあった。 葉の展開様式(一斉開葉と順次開葉)とシュートの傾きとの関連を調査するとともに数理模型をもちいたシミュレーションを行った。一斉開葉のブナではシュートを大きく傾けており、この特質は自己被陰を避け、各葉に光を与えて、シュートあたりの光合成量を最大化する方法であると推定された。しかしシュートを傾けたままでは樹高成長は達成できず、多くのブナでは6月から7月にかけて、シュートの傾きが回復し、樹高成長を達成していることが明らかになった。このように、季節的に伸長様式を変化させることにより自己被陰の回避と樹高達成の折り合いをつけていることが明らかとなった。しかし、低木においてはこのような季節変化は観察されておらず、低木から高木への推移は依然として謎として残っている。
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