研究概要 |
高等植物におけるメチオニン生合成の鍵段階を触媒するシスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)は,CGS1遺伝子にコードされ,その発現はCGS1 mRNAの分解段階でS-アデノシルメチオニン(SAM)によってフィードバック制御される。この制御にはMTO1領域と名づけたCGS自身のアミノ酸配列がシス因子として作用し,MTO1領域翻訳直後に起こるSAMに応答した翻訳停止とこれと共訳したCGS1 mRNA分解とからなる。 リボソームで新たに合成されたペプチドはリボソームの大サプユニットを貫く出口トンネルを通って出てくる。CGS1 mRNAの翻訳停止にはMTO1領域の新生ペプチドと出口トンネル内の狭窄部位を形成するリボソームタンパク質との相互作用が関わるとの作業仮説を検証するため,ポリエチレン・マレイミドを用いたPEG化解析を行った。ポリエチレン・マレイミドはペプチド内のシステイン残基のSH基と共有契合する。MTO1領域内外のシステイン残基をアラニンに置換したうえで,翻訳停止位置からの距離が40-60アミノ酸残基の領域のアミノ酸残基をシステインに置換し、ポリエチレン・マレイミドとの反応性を,野生型とMTO1変異型,およびSAM添加と非添加で解析した。その結果,野生型のMTO1配列を持つmRNAをSAM存在下で翻訳した場合にはPEG化効率が低下することが示された。このことは,SAMに応答して翻訳停止したリボソーム内ではMTO1領域の新生ペプチドが何らかの構造をとっていることを示唆する。
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