研究課題
これまで、水分屈性発現時に根冠でデンプンが分解すること、MIZ1およびMIZ2/GNOMが水分屈性に必須の分子であることを明らかにしてきた。MIZ2/GNOMは小胞輸送に機能するARF-GEFであり、MIZ1は機能未知のタンパク質である。そこで、水分屈性発現過程におけるMIZ1の作用点を同定することを目的として、水分屈性を欠損したmiz1、miz2および水分屈性の亢進が認められるMIZ1過剰発現体を用いた解析を行った結果、MIZ1は水分屈性発現過程において、水分勾配刺激依存的デンプン分解の下流、且つMIZ2/GNOMの上流で機能することが示唆された。また、miz2はGNOM機能のうち、水分屈性特異的に働く機能を欠損すると考えられるが、GEF活性中心に変異を持だないgnom^<B4049>、およびgnom^<R5>をそれぞれmiz2と交配したトランスヘテロ接合体は、いずれも水分屈性を完全に欠損していた。一方、GEF活性が失われたgnom^<emb30-1>とmiz2のトランスヘテロ接合体は、部分的に水分屈性を回復した。これらの結果から、水分屈性に必要なGNOM機能は、GEF活性以外にも存在することが示唆された。さらに、シロイヌナズナの重力屈性が異常な突然変異体の根の水分屈性を解析した結果、オーキシン誘導性遺伝子の転写の抑制因子をコードしているAXR2/IAA7の機能獲得型突然変異体であるaxr2突然変異体、およびオーキシン受容体を欠損したtirl afbl afb2 afb3四重突然変異体の根では、正常な水分屈性の発現が認められなかった。重力屈性異常を示すpgm、pin2、aux1突然変異体では、水分屈性が正常であるか、促進される傾向にあった。したがって、重力屈性と水分屈性では、刺激感受・情報伝達機構が異なるものの、いずれの発現にもオーキシン応答を必要とすることが示された。加えて、トランスクリプトーム解析の結果、水分屈性初期において、ABA応答および乾燥応答を介したシグナル伝達が重要な役割を担っており、そのシグナル伝達系は重力屈性および光屈性とは異なる新規なものであることが示唆された。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (28件)
Photobook植物細胞の知られざる世界(化学同人)
ページ: 50-51
Plant Science 177
ページ: 297-301
植物の生長調節 44
ページ: 10-21