研究課題
本研究では、植物が乾燥環境適応戦略として獲得した根の水分屈性を制御する分子の同定と機能解析を行い、それら分子のネットワーク機構を明らかにすることを目的にしている。そのため平成23年度は、MIZ1の機能解析をすすめるとともに、根の水分屈性能が自然界における植物の生存戦略として乾燥回避に果たす役割を理解することを試み、以下の成果を得た。MIZ1の機能を明らかにする目的で、MIZ1を過剰発現する植物体を作出し、それらの特性解析を行った。その結果、MIZ1の過剰発現は主根の水分屈性を促進しただけでなく、側根の形成を抑制した。また、この側根形成の抑制はオーキシンの投与により回復し、根のオーキシン量が野生型と比べmiz1突然変異体で増加しMIZ1過剰発現体で低下していることを明らかにした。これらのことからMIZ1が根のオーキシン量を負に調節する分子であることが示唆された。MIZ1の過剰発現が側根形成にも関与したことから、側根の水分屈性能のMIZ1による制御についても解析した。まず、側根の水分屈性実験系を構築し、野生型およびmiz1突然変異体の間で水分屈性能について比較を行った。その結果、側根も主根と同様に水分屈性を示すこと、側根の水分屈性においてもMIZ1が必須であることを明らかにした。加えて、MIZ1タンパク質が細胞質ならびに小胞体膜に局在することを明らかにするとともに、MIZ1と結合するタンパク質の単離に成功した。土壌中に水分勾配を形成する実験系を確立し、根系発達と水分屈性の関係を野生型、miz1突然変異体、MIZ1過剰発現体を用いて解析した結果、水分勾配の存在する土壌中では、野生型の根は高水分側に分布し、それがMIZ1過剰発現体で促進される一方で、miz1突然変異体ではみられず、またこのような条件では、miz1突然変異体は野生型と比較して早く枯死することがわかった。
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