青色光による気孔開口のシグナル伝達機構を解明することを目的として、気孔開度変異体のスクリーニングと細胞膜プロトンポンプの活性調節について解析を進めた。単離した気孔開度変異体について詳細な解析を行った結果、その1つは、アブシジン酸受容体候補であるCHLHのミスセンス変異であることがわかった。さらに、アブシジン酸に対する感受性を調べた結果、この変異体の気孔はアブシジン酸に対して非感受性を示した。そこで、アブシジン酸との結合能を調べたが、CHLHはアブシジン酸との結合活性を閉めさなかった。この結果は、CHLHがアブシジン酸シグナル伝達の受容体とは異なる働きを持って関与していることを示している。今後は、CHLHのシグナル伝達における分子機能について解析を進めたい。さらに、その他の変異体の解析により、トリプトファンシンターゼa1のミスセンス変異が気孔開口を促進していることがわかった。さらに詳細な解析を進めた結果、この変異体ではトリプトファンの前駆体が蓄積することにより、内生のオーキシン含量が増加し、その結果、気孔が開口していることが明らかとなった。 また、細胞膜プロトンポンプの活性調節機構については、ソラマメ孔辺細胞プロトプラストとシロイヌナズナの黄化芽生えより単離した膜画分を材料に、in vitroでのプロトンポンプのリン酸化反応の解析を進め、同じく細胞膜に存在するK-252a非感受性プロテインキナーゼとタイプ2Cプロテインホスファターゼがプロトンポンプのリン酸化反応に関与していることが明らかとなった。今後はこれら因子の遺伝子同定を進める。
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