研究分担者 |
河野 重行 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70161338)
宮村 新一 筑波大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00192766)
加藤 敦之 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90177428)
長里 千香子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (00374710)
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研究概要 |
本研究では,1)雌雄配偶子間の認識機構,2)オルガネラ(ミトコンドリア,葉緑体,セントリオール)の細胞質遺伝機構」について細胞形態学および分子生物学的解析から研究を進め,3)藻類の受精発生過程を一つのモデルとして,同形配偶子接合から異形配偶子接合,そして卵生殖へと有性生殖パターンが変化(進化)する過程で,オルガネラ細胞質遺伝機構の制御がどのように変化するのかを具体的な実験観察結果から考察することを最終的な目的としている。 本年度は,褐藻ワカメ(卵生殖)を材料としてオルガネラ細胞質遺伝について電子顕微鏡と分子遺伝学的手法を用いて調査を行った。陸上植物や動物の幾づかの種類と異なり、褐藻の卵生殖では成熟し造精器から放出した精子細胞のオルガネラには遣伝子が残っていることが抗DNA抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察から明らかとなった。さらに、連続切片の微細構造観察から、精子由来の葉緑体とミトコンドリアは受精後速やかに接合子内において小胞体様膜構造に取り囲まれ消化され、その時点でオルガネラDNAも消失していることが単細胞PCRの手法によって明らかになった。つまり、褐藻の卵生殖の場合には精子由来の葉緑体・ミトコンドリアは受精後、リソソーム・オートファジー系によって選択的に消失することになる。同型配偶子接合を行うカヤモノリの場合には雄性配偶子由来ミトコンドリアDNAは,接合子が4細胞以降に発達した時に特異的に消失する。以上の結果から、有性生殖の進化に伴ってオルガネラDNAの消失時期が大きくずれてくることが判明した。現時点では、同型配偶子接合における受精後の雌雄配偶子由来ミトコンドリアの挙動が不明であるため、今後はこの問題に対して明らかにして行く予定である。
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