平成22年度は、前年に引き続き残った課題のデータを収集するとともに、前年までに得られたデータに基づいた成果公表に力を傾注した。その結果、7本の査読付き論文、8件の学会発表、1冊の書籍を公表することができた。それらの成果では、ウメマツアリやその寄生種ヤドリウメマツアリについて、交尾戦略や、有翅メス、オス、ワーカーになる卵の生産パターン、ウメマツアリ長翅型もオスをクローンとして生産することなど、多くの貴重な新たな知見が得られた。また、11月には日本動物行動学会第29回大会において、本研究費による研究集会としてラウンドテーブルを行い、そこまでに得られた知見を総合し、ウメマツアリの特殊な繁殖様式とその進化について総合的な研究概要を紹介し、多くの観衆を集めた。そこでは、公表された事実に基づく、現在得られている知見の総合的解説に加え、まだ論文として公表されていないアリ類全体における単為生殖の進化パターンの比較とウメマツアリにおける単為生殖の特殊性と一般性に関する概説、ウメマツアリ内における特殊な繁殖様式やその他の形質がどのように進化してきたのかを系統解析に基づいて再構成する試みなどが紹介された。現在、これらの内容は論文投稿中、または準備中となっており、今後1年以内に公表していく予定である。その他、新たに追加したデータに基づく解析および成果の公表も予定している。これらのことを勘案すると、申請した研究の目的、研究実施計画に照らし、そのかなりの部分に沿った形での成果を公表することができたと考えられる。
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