研究課題
ヤモリ下目は有鱗目トカゲ亜目の一系統であり、1100種(100属)余りの現生種を含む大きなグループである。ヤモリ下目の科レベルあるいは科内の亜科・属レベルの系統関係は、形態情報を用いて精力的に研究されてきたが、まだ不明な点が多く、各グループが持つ形態的特徴の進化過程がよく解明されていない。本研究では、ヤモリ類を題材にして次世代シーケンシング技術を用いたミトコンドリアゲノミクスの研究手法を確立し、ヤモリ類の系統関係や生物地理に関する理解を増進させることを目的とする。本年度は、次世代シーケンシング技術を用いたミトコンドリアゲノム解読の実験系の開発に主として取り組んだ。マイヤーらがヒトミトコンドリアDNAの既知配列の解読に用いた手法を基礎にして、各ステップの実験条件を検討して改良を加えた。まず、ヤモリ類の標本から抽出した全DNAを鋳型にして、ミトコンドリアゲノムのほぼ全周に相当する17キロ塩基対のLong PCR産物を効率的に得る実験条件を確立した。続いてヤモリ類10種から増幅したLong PCR産物を細断して種特異的なタグDNAを末端に付加し、454Titanium型ゲノムシーケンサーで得られた2万readのDNA塩基配列を種ごとにアッセンブルした。既知の塩基配列を持つバンドトカゲモドキを用いて、解読した塩基配列の正確性を調べたところ、制御領域内のタンデムリピート領域を除いて、100%の一致度を示すことが分かった。従って本法により、複数種の配列未知のミトコンドリアゲノム塩基配列を迅速かつ正確に並列解読できることが示された。本法には、まだ細部において条件を詰めるべき点が残っているが、基本的には次世代のミトコンドリアゲノムシーケンシングの手法として非常に有望であることが分かった。次年度以降、さらにヤモリ類の多くの種についてデータを収集していきたい。
すべて 2008 その他
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http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~kuma/index.html