ヤモリ下目は爬虫綱有鱗目トカゲ亜目の一系統であり、1100種(100属)余りの現生種を含む大きなグループである。ヤモリ下目の科レベル及び亜科・属レベルの系統関係は、形態情報を用いて盛んに研究されてきたが、まだ不明な点が多く、各グループが持つ形態的特徴の進化過程がよく解明されていない。本研究では、ヤモリ類を題材にして次世代シーケンシング技術を用いたミトコンドリアゲノミクスの研究手法を確立し、ヤモリ類の系統関係や生物地理に関する理解を増進させることを目的とする。平成21年度は、次世代シーケンシング技術を用いたミトコンドリアゲノム解読の実験手法の改良に主として取り組み、併せてヤモリ類の新規ミトコンドリアゲノム全塩基配列を数種において決定した。前年度にヤモリ類10種の全ミトコンドリアゲノムの解読を行なった際に、解読エラーをどう評価するかが一つの問題点として浮かび上がった。そこで、配列が既知であるミトコンドリアゲノム数種をコントロールに用いて、エラー頻度の定量的評価を行った。その結果、1サイトあたりの重複度(redundancy)が10 read以下の条件では、ホモオリゴマー領域にエラーが頻発するものの、重複度を20 read程度に上げればエラーは極めて少数に留まるとの結果が得られた。これによって、実験条件をうまく制御することによって、配列未知のミトコンドリアゲノム全塩基配列を正確に並列解読できる見通しが得られた。次年度以降、さらにヤモリ類の多くの種について本法を適用し、データを収集していきたい。
|