研究概要 |
北太平洋に広く分布するクサウオ科のサケビクニン種群について引き続き形態学的・遺伝学的分析と分類学的検討を行った.形態学的・遺伝学的分析により,サケビクニンと考えられてきたものには海域ごとに対応した複数種が含まれること,また,日本海には分断・二次的接触を繰り返した集団が存在することを明らかにした.これらは論文として発表した. 今まで体系的な研究が知られていなかった日本海の魚類相を標本による採集記録と過去の文献からまとめた.日本海には日本で見られる魚種の約1/4が分布し,従来考えられていたよりも多様性に富むことを明らかにした.これについては日本魚類学会で発表し,今後論文にまとめる予定である. また,南日本に分布するアカシタビラメと,日本では有明海のみに産するデンベエシタビラメに関する遺伝的分析を行った.デンベエシタビラメはアカシタビラメの新参異名であるという意見と,別種であるという意見との両様があり,再検討が必要となっていた.ミトコンドリアDNAのCytb領域約1200bpを調べたところ,デンベエシタビラメはアカシタビラメとは明瞭に異なるクレードを形成し,また有明海内でアカシタビラメと思われる個体も採集されたことから,両者は別種として扱うのが適切と判断された. 有明海には8種の「有明海特産種」が分布することとなったが,そのうち数種について有明海と黄海の間での遺伝的分化を比較したところ,個体群の隔離レベルは種毎に大きく異なることが示された.各種の生活史・分布域などの違いがこの差を引き起こしていると考えられる.
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