膜タンパク質を結晶化するには、界面活性剤のミセル中に膜タンパク質を取り込んだ状態で結晶化する必要がある。この状態では膜タンパク質の疎水的な表面は特定の構造をもたないミセルで覆われているため、結晶格子の形成に寄与できない。従って膜の外に飛び出した親水性部分が大きい膜タンパク質ほど結晶化しやすい傾向がある。そこで、村田、小林らは、赤血球から精製したバンド3をリポソームに再構築して免疫することで、抗バンド3モノクローナル抗体を作製することに成功した。得られた抗体は、精製バンド3と結合しWestern Blotに反応のしない(変性バンド3には結合しない)立体構造を認識できる抗体であることが分かった。現在、得られた6種類の抗体のFabフラグメントと精製バンド3を共結晶することで親水性部分を拡大し、結晶化効率の向上を試みた。これらの抗体を用いて結晶化条件の最適化とスクリーニングを行ったところ、1種類の抗体で分解能3.0-3.5Åの結晶を得ることができ、回折データを収集した。水銀を用いた重原子置換法により、位相を決定してモデリングを試みた。その結果、バンド3は阻害剤により外向き構造で固定化され、ダイマーを形成していた。抗体はバンド3の細胞外領域を認識していた。現在、論文を作成している。
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