研究概要 |
本研究では、ペプチドグリカン層を貫く細菌べん毛ロッドの形成機構を明らかにするため、X線結晶構造解析法と電子顕微鏡法を組み合わせて、ロッドキャップFlgJの構造、FlgJのペプチドグリカン分解活性発現機構、ロッドおよびロッドーキャップ複合体構造の解明を目指している。本年度の主な成果は以下のとおりである。 ・ペプチドグリカン分解活性を有するFlgJ21kDaフラグメントのX線結晶構造解析を行い、1.9A分解能での解析に成功した。FlgJは、シーケンス上で全く相同性が見られなかった卵白リゾチームと似た構造を持つ。特に活性部位を構成する領域において、非常によく似た構造を持ち、リゾチームと同様の反応機構でペプチドグリカン鎖の切断を行うと考えられる。 ・FlgJとリゾチームの立体構造比較から、活性部位の残基に変異を加えた蛋白質を作成し、べん毛形成能とペプチドグリカン分解活性を測定し、FlgJのペプチドグリカン分解に必須なグルタミン酸を同定することができた。また、グルタミンへの変異させると活性が著しく低下する、別のグルタミン酸も同定した。しかし、この残基は活性発現には重要であるにもかかわらず、ここに変異を持っミュータントはべん毛を形成した。このことから、ロッド形成には高いムラミダーゼ活性は必ずしも必要ではないことが明らかになった。 ・FlgG,FlgFのNC末のフレキシブルな領域を切断したフラグメントの新たなコンストラクトを作成し、発現・精製を行った。
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