研究概要 |
PcyAはヘムの代謝産物であるビリベルジンIXα(BV)をフェレドキシン依存的に還元し、光合成や光応答に利用されるテトラピロール色素フィコシアノビリンを合成する。PcyAは、まずBVのexo-ビニル基を還元した後、反応中間体である18^1,18^2-ジヒドロビリベルジン(18EtBV)のendo-ビニル基を還元する。このような部位特異的2段階反応から、PcyAでは基質の還元部位と還元順序を厳密に認識・制御する独自のメカニズムが機能している。PcyAの反応機構の構造学的基盤を明らかにするため、すでにSynechocystis sp.PCC6803由来PcyAのBV結合型やPcyA-18EtBVの結晶構造を決定していたが、今年度はこれらに加えて、化学合成した基質アナログであるビリベルジンXIIIα(BV13)を用いて、PcyA-BV13の原子分解能能で解析するとともに、基質還元に必須であるGlu76をグルタミンに置換したE76QのBV複合体の結晶構造解析とE76Qの酵素学的解析を行った。これらの結果を総合して、PcyA-BV中で特異的にGlu76のカルボキシル基とBVのexo-ビニル基が近接していることがわかった。これはOH-π結合といえ、このOH-π結合がPcyAの先行的なexo-ビニル基還元の構造要因であると考えられた。 一方、クロロフィル分解系で主要な酵素red chlorophyll catabolite reductase (RCCR)の結晶構造を決定した。注目すべきことに、RCCRはPcyAと基本的に同じフォールディングをしており、フェレドキシン依存性ビリン還元酵素ファミリーに属することを示した。さらに、RCCRの基質であるRCCとの複合体の結晶構造を決定し、反応に関与するアミノ酸残基を同定すると共に、部位特異的還元反応の機構を提唱した。
|