本研究では小胞体ストレス応答におけるIRE1経路で見いだされた、スプライソソーム非依存型スプライシング機構の構造的基盤の解明を目指している。具体的には酵母IrelpのRNaseドメイン、基質mRNA、およびこれらの複合体の構造解析を行い、配列特異的なmRNA切断機構を明らかにすること、またRNaseドメインを含むC末端ドメイン全長の立体構造情報にもとづき、RNaseドメインを含むC末端ドメイン全長が持つmRNA切断活性の調節機構を解明することを目指している。 酵母Ire1p RNaseドメインの構造解析:昨年度までに完了させたNMR信号の帰属を用い、RNaseドメインの低分解能構造を得た。またmRNA切断活性に重要な領域がミリ秒で運動していることが分かった。 HACl mRNA切断部位を含むステムループRNAの構造解析:Irelpが認識するRNA配列に配列特異的な立体構造があるかどうかを明らかにするために、平成21年度に引続きHAC1 mRNAの2つのステムループのNMR構造解析に取り組んだ。昨年度までに整備した^<13>C^<15>N安定同位体標識法を行いて試料調製を行いNMR信号を解析したところ、ループ内の保存残基が塩基対を形成することを示唆する結果が得られた。 変異体を用いたmRNA認識機構および切断調節機構の解明:HAC1 mRNAの認識に関与するRNaseドメインやHACl mRNAに点変異を導入し、NMRを用いて構造情報とin vitroでの結合活性を解析するとともに切断活性を解析した。
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