研究概要 |
本年度は以下の研究項目に取り組み、分子・原子レベルでの成果を得ることができた。 1)ペルオキシンの発現・精製・大量調製技術に関する研究 ペルオキシソーム移行シグナル1(PTS1)の受容体であるペルオキシンPex5pとその膜状ドッキング因子であるPex14pの結合部位を含むN-末側領域Pex14p(25-70)の大量調製に成功した。 2)ペルオキシンの結晶化と立体構造に関する研究 上記Pex14p(25-70)の結晶化に成功、結晶構造解析を行った結果、3個のヘリックスからなるドメイン構造を明らかにした。さらに、生物種間で最も保存性の高いPhe-35およびPhe-52が溶媒側に突出ており、近傍の塩基性アミノ酸残基とで形成する結合部位(Sites1&2)にPex5p N-末端領域側の複数存在するペンタペプチドモチーフ、WXXXF/Yがすっぽりはまり込む構造をとっていることを見出した。 3)ペルオキシンの機能解析系の確立に関する研究 Pex14pのPhe-35およびPhe-52の重要性をPex14p変異体を作成し検証した。Pex14pF35A,Pex14pF52A,およびPex14pF35A/F52Aのいずれも、in vitroでのPex5pとの結合活性、in vivoでの活性すなわちpex14変異細胞ZP161に対する相補活性、Pex5pリクルート活性を有していないことが判明した。 4)ペルオキシソーム膜タンパク質の輸送と膜形成機構 ペルオキシソーム膜形成過程の解明は重要課題の一つである。ペルオキシソーム膜形成には、ほ乳類細胞ではペルオキシンPex3p、Pex16p、およびPex19pが必須である。先に、Pex19pとPex3pの機能に関しては、Pex19pはシャペロン活性を有し新規合成ペルオキシソーム膜タンパク質と細胞質ゾル中で複合体を形成、安定化させ,膜上のPex3pをレセプターとして輸送・局在化させ、膜形成が起きること(Class I pathway)を、我々を含めいくつかのグループは見出している。我々は、今回Pex19pが同様に新規合成Pex3pと細胞質ゾル中で複合体を形成、膜上のPex16pをレセプターとして輸送,局在化させることにより、ペルオキシソームの膜形成が始まることを発見した(Class II pathway)。
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