研究概要 |
免疫応答が適正に誘導されるには,抗原の種類に応じてT細胞が分化する必要がある.T細胞は,CD8陽性T細胞である細胞傷害性T細胞とCD4陽性T細胞であるヘルパーT(Th)細胞に大別される.Th細胞は,産生するサイトカインの種類により,1型(Th1)と2型(Th2)に分類され,各々細胞性免疫または液性免疫に関わる.ナイーブTh(Th0)細胞にIL-27が作用するとTh1細胞を誘導することが知られている.また近年になり,Th1およびTh2への分化を抑制した環境にIL-23を加えてTh0細胞を培養すると,炎症性サイトカインIL-17を産生するT(Th17)細胞に直接分化することが報告された.本研究の目的は,T細胞の分化誘導機構を構造生物学的に解明することである. 本件度は,IL-23と特異的受容体であるIL-23Rの複合体の構造解析を目指した.IL-23についてはHEK293S細胞を用いた発現系を,IL-23Rについては大腸菌を用いた発現系を構築した.これらの蛋白質の精製を行った後,混ぜて共結晶により結晶化を行った結果,結晶を得た.放射光実験施設において回折実験を行い,2.6A分解能までのデータを収集した.この結晶の空間群はP61で,格子定数はa=b=108.925A, c=83.329Aであった.2008年末に報告されたIL-23の構造を用いて分子置換法により構造解析を行ったところIL-23単独の結晶あることが分かった.今回得られた結晶は,報告済みの結晶と空間群が異なるため,現在構造の精密化を進めているところである.
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