研究概要 |
免疫応答が適正に誘導されるには,抗原の種類に応じてT細胞が分化する必要がある.T細胞は,CD8陽性T細胞である細胞傷害性T細胞とCD4陽性T細胞であるヘルパーT(Th)細胞に大別される.Th細胞は,産生するサイトカインの種類により,1型(Th1)と2型(Th2)に分類され,各々細胞性免疫または液性免疫に関わる.ナイーブTh(ThO)細胞にIL-27が作用するとTh1細胞を誘導することが知られている.また近年になり,Th1およびTh2への分化を抑制した環境にIL-23を加えてThO細胞を培養すると,炎症性サイトカインIL-17を産生するT(Th17)細胞に直接分化することが報告された.本研究の目的は,T細胞の分化誘導機構を構造生物学的に解明することである. 本件度は,昨年度結晶化および構造を解析した糖修飾を受けたIL-23の結晶構造の精密化を2.6Å分解能でR値が19.50%まで行った.また,IL-23受容体であるIL-23RおよびIL-12Rβ1の単独およびIL-23との複合体の構造を明らかにするため,GSTタグを融合したこれらの受容体の発現系の構築を大腸菌を用いて行った.これらの融合型受容体の精製に成功したが,GSTタグを切除すると不溶化してしまった.現在,GSTタグ融合型受容体であるIL-23RまたはIL-12Rβ1とIL-23を混ぜて,複合体として精製を行うことが可能か試みているところである.これらの複合体を精製した後,受容体に結合しているタグを酵素により切除し,結晶化・構造解析を行う予定である.
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