研究概要 |
膜蛋白質の生合成と機能構造形成に関して下記の成果を得た。 【1】 ペルオキシソーム膜タンパク質PMP70のアミノ末端部分には,3種のオルガネラ標的化シグナルが混在し,それらが協調的に作動することによって,ペルオキシソームへの局在化と膜組み込みが達成されることを明らかにした。すなわち,アミノ末端部の80アミノ酸残基の親水性配列には,続く疎水性度の高い膜貫通配列(TM1)が小胞体へと運ばれるのを抑制する作用があること,TM1部分は小胞体へと標的化される作用があること,アミノ末端の80残基の配列にはミトコンドリアへ標的化される作用のあることを明らかにした。【2】 シグナル配列自体がポリペプチド鎖の膜透過駆動作用をもつことを実証した。ストレプトアビジンに結合するペプチドタグ(SBP-tag)とストレプトアビジン(SAv)を用いたポリペプチド鎖膜透過制御実験系を使って,ポリペプチド鎖の膜透過を抑制するのに必要なSAv濃度を滴定し,透過駆動作用を定量化した。次のことが分かった。(1) 膜透過駆動作用はKd=10^<・9>程度のSBP-SAv親和性と拮抗する。(2) シグナル配列に近く,N-末端部分の引き込みとシグナル配列のトランスロコンへの進入が共役する場合には,SBP-tagにはたらく膜透過駆動作用が大きい。シグナルから離れた部位に対する膜透過駆動作用は近い場合にくらべて弱い。(3) シグナル配列の疎水性部分にプロリン残基を導入すると,N-末端の膜透過作用が明確に低下する。これらを総合して,シグナル配列自体が膜透過駆動力を供給すると結論した。【3】 SBP-tagとSAvを駆使し,トランスロコンサブユニットと透過途中のポリペプチド鎖の配置関係をさらに精査した。膜透過途上の2本のポリペプチド鎖は親水環境内に保持されていることが明らかになった。
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