研究課題
膜タンパク質の生合成と機能構造形成に関して下記の成果を得た。【1】 ペルオキシソーム膜タンパク質ABC輸送体D3アイソフォーム(PMP70)の小胞体膜組み込み特性および、小胞体標的化の抑制について無細胞系で解析し、次の結果を得た。(1)最初の膜貫通セグメント(TM1)が小胞体に組み込まれる特性を有すること,(2)その組み込みをN末端12残基の短いセグメント(N12)が抑制していること,(3)その抑制に5番目のSer残基(Ser^5)が必須であること、(4)N12モチーフ・GST融合タンパク質の精製標品がN12による小胞体標的化抑制作用を解除することなどを見出した。厳密な配列特性を有するモチーフが、何らかの因子を介して小胞体組み込み作用を発揮していると結論した。【2】 小胞体トランスロコンでの新生ポリペプチド鎖の生合成に共役した膜透過を詳細に解析し、疎水性配列から60残基離れた正電荷アミノ酸が膜透過停止の亢進作用を示しうること、その際疎水性配列は一度小胞体膜内腔に露出すること、その後疎水性配列は正電荷の作用によって逆行し膜貫通状態となることを示した。正電荷は疎水性配列から予想以上に離れた状況で膜透過を抑制できると結論した。【3】 膜タンパク質の極性局在化について、ABC輸送体C2アイソフォームを対象とした。C2は極性化した細胞の細胞膜頂端側に局在化し特定の物質の排出に寄与する。この極性局在化にカルボキシル末端77残基が関わることを明らかにし、この部分に結合する因子を探索し足場タンパク質であるPDZK1を同定した。さらに、PDZK1はカルボキシル末端の特定のモチーフに結合すること、細胞膜頂端側に存在すること、このモチーフを変異するとC2の頂端側への局在化が大きく低下することなどを見出した。足場タンパク質PDZK1がABC輸送体の極性局在化に関わっていることを提唱した。
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