X線回折能に異方性がみられ、また双晶が成長する頻度が高いマイクロゾーマルプロスタグランジンE_2合成酵素1(mPGES1)の初期結晶を改良する目的で、精製条件と結晶化条件の最適化、遺伝子工学的手法による蛋白質改変を行った。その結果、双晶の成長頻度を低下させる事ができるようになった。1.精製条件を検討し、均質な精製蛋白質試料を安定して生産できるようになった。従来の精製条件では、活性を保持しCBB染色のSDS電気泳動で単一バンドとなるmPGES1を精製する事が可能であったが、一般的な蛋白質の紫外吸収プロファイルに関係する発色団だけでは説明できない紫外吸収プロファイルを示す場合があった。精製過程にコール酸骨格を持つ界面活性剤を用いる事、また溶液の塩濃度を最適化し、この点を改良した。2.X線回折能の異方性を改良するため、結晶中での分子間相互作用の増強を期し、遺伝子工学的手法によって変異を導入したmPGES1を作成した。mPGES1と同じ蛋白質ファミリーに属する膜蛋白質ロイコトリエンC_4合成酵素(LTC_4S)では、両親媒性のαヘリックスと疎水的な膜貫通ヘリックスが関与する分子間相互作用が、全く異なる結晶化条件で成長した結晶間で保存されている。mPGES1には、LTC_4Sでみられた両親媒性αヘリックスに相当する部分はアミノ酸配列の比較の上で存在しないので、LTC_4Sの両親媒性αヘリックスに相当するペプチド鎖を遺伝子工学的手法で導入した。この蛋白質を用いた結晶化では、従来と全く異なる条件で結晶成長が観察された。
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