ラミニン結合型インテグリンによるリガンド識別機構を解明するため、ラミニンα5鎖LG1~LG3ドメインの中で生物種を越えて保存されているアミノ酸残基をアラニンに置換した一連の組換えラミニンを発現・精製し、それらのインテグリン結合活性を固相結合アッセイ法により測定した。その結果、LG1~LG3ドメインで保存されているいずれの酸性残基をアラニンに置換しても、50%以上のインテグリン結合活性の低下は認められず、その一方でγ1鎖C末端領域のグルタミン酸残基(Glu-1607)をアラニンに置換した場合は活性が80%以上低下していた。これらの結果は、インテグリンのリガンド結合部位の二価金属イオンに配位する酸性残基が従来考えられていたα5鎖LG1~LG3ドメインの中ではなく、γ1鎖C末端領域に存在することを強く示唆している。また、これら一連のラミニン変異体とルテラン受容体との結合活性を測定したところ、多くの変異体において、インテグリン結合活性とルテラン結合活性の間には高い相関が認められたが、一部の塩基性残基の変異体においてはインテグリン結合活性のみが低下していた。また、γ1鎖のGlu-1607の変異体ではルテラン結合活性の低下は認められなかった。なお、ルテラン結合活性だけが低下している変異体は見つからなかった。これらの結果は、(i)ルテラン受容体との結合にはγ1鎖C末端領域のGlu-1607が関与しないこと、(ii)α5鎖LG1~LG3ドメインにおけるルテラン結合部位とインテグリン結合部位はほぼ重なっているものの、前者がより限定されたアミノ酸残基で構成されていることを示している。
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