研究概要 |
今年度は、まずコンカナバリンA(Con A)投与で誘導されるヒト自己免疫性肝炎モデルを用いて、肝臓での炎症誘導におけるNotchシグナルとIL-23の役割について検討を行った。初めに、Notchシグナルを介した刺激によるT細胞で発現誘導される分子をマイクロアレイを用いて網羅的に探索したところ、その1つの分子として肝臓保護作用を有するIL-22が芳香族炭化水素受容体(AHR)を介して発現が強く誘導されることを見出した。そこで、Con A肝炎モデルを用いて、Notchシグナル伝達に必須の転写因子RBJ遺伝子のT細胞特異的欠損マウスを用いて検討したところ、Notchシグナルは、AHRさらにその下流のIL-22産生誘導を介して肝障害からの肝臓の保護に作用していることを明らかにした(PNAS, 2010)。さらに、IL-22産生誘導作用を有するIL-23の肝炎誘導における役割をp19遺伝子欠損マウスを用いて検討したところ、内在性のIL-23を欠損すると肝障害が増悪化し、IL-22蛋白投与で回復が見られたが、IL-23蛋白投与はIL-22のみならず炎症性のサイトカインIL-17産生も誘導し、肝障害の保護効果は弱かった(論文Revice中)。次に、IL-27の破骨形成の抑制効果を見出し、その作用機序や治療効果を検討した。その結果、IL-27は、T細胞レセプターを介した刺激によりT細胞上に発現誘導されるRANKL発現や可溶性(s)RANKL産生を強く抑制することを見出した(Immunol Let, in press)。さらに、タイプII型コラーゲンで免疫し誘導するコラーゲン誘導関節炎(CIA)で、IL-27を発現するアデノウイルスを関節内に投与することにより関節炎を軽減させることが可能であることも明らかにした(Arthritis Rheum, in press)。
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