研究概要 |
カルシウム放出チャネルであるイノシトール1,4,5三リン酸(IP_3)受容体のリガンド結合によるチャネル開口の分子機構を解析し、1、アミノ末端側およそ220アミノ酸からなるサプレッサードメイン内に存在するチロシン167がチャネルポアを膜貫通領域と相互作用し、IP_3結合とチャネル開口のカップリングを担っていること、2、四量体を形成するIP_3受容体サブユニットのうちアミノ酸650-2217からなるインターナルカップリングドメインがチャネルの開閉を制御するゲートを作っていること、3、開状態にあるチャネルでは4分子のチャネル形成ドメインに対して3分子のインターナルカップリングドメインが会合していること、4、チャネルの活性化を引き起こすIP_3結合と不活性化を引き起こすカルシウム結合は排他的であり、このためIP_3濃度によって不活性化のカルシウム感受性が変化することを明らかにした。これらの結果に基づき、IP_3受容体の活性化状態を表す新たな数理モデルを構築した。さらに生きた細胞内でリアルタイムでIP_3濃度を測定可能なIP_3センサーを用いて、HeLa細胞におけるIP_3産生に関与するホスフォリパーゼCのサブタイプを同定し、それぞれのカルシウムによる活性調節の差を明らかにした。また、細胞内カルシウム貯蔵器官にカルシウムを取り込むカルシウムポンプの活性を蛍光共鳴エネルギー移動を利用して生きた細胞内で可視化することに成功し、これまでに考えられているよりも細胞質のカルシウム濃度に対して高い協同性を示すことを明らかにした。以上の結果を包括する数理モデルを作成し、測定されたIP_3およびカルシウム動態を再現することで、細胞外刺激の刺激強度に応じて周波数が変化する細胞内カルシウム振動形成の分子機構を明らかにした。
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