研究課題
カルパインはヒトで15種類の遺伝子にコードされるCa^<2+>-要求性細胞内Cysプロテアーゼである。約半数は主にマウス遺伝学から、様々な生物現象とリンクすることが示されている。特に組織普遍的m-カルパインの遺伝子欠損で胚性致死となるため、カルパインの重要性は明確である。しかし、遺伝学的知見を説明する生理機能・作用機序に関しては、決定打が無くブレイクスルーが切望される。そのような中、胃特異的カルパインnCL-2は膜輸送に関与するCOPI小胞サブユニットβ-COPを基質とし、切断によりその機能を修飾することを見出した。哺乳類カルパインと膜系との関係は、研究黎明期から示唆されていたが、詳細は不明であり、分子レベルでの記述は初めてであった。一方、酵母S.cerevisiaeにはカルパインCpl1が一種類存在し、アルカリ適応系においてエンドソーム膜上で膜輸送系のVps蛋白質群と協同し、Rim101を切断する。Cpl1はカビのカルパインPalBのホモログであり、酵母・カビ・ヒトで唯一保存されているカルパインである。酵母、カビでは、その生理機能及び作用機序が分子レベルでほぼ解明されたが、ヒトPalBH/カルパイン7の解析はほぼゼロである。そこで、PalBH遺伝子ノックアウトマウスを用いて、カルパインの新しい機能としての膜輸送系への関与の解析を目的とした。今年度は、まずCapn7^<-/->マウスのバッククロスの完成をめざし、N=10を達成した。また、胎生致死の可能性を考慮して、解剖によりその死亡時期の特定を行った結果、少なくとも出生するホモ個体の存在を確認した。今後はさらに、詳細な表現型の解析を行っていきたい。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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