研究概要 |
当該年度においては, バクテリア菌体内部でのGFP蛍光タンパクの蛍光強度の正確な計測を主たる目的とした. まずは, エバネッセント型FRAPによる菌体内の蛍光色素の退色の具合の定量性について検討した. 一般的にはFRAP実験のためには集光したレーザーを用いるが, 菌体は長さが2マイクロメートルと小さく, 集光レーザーのスポット径(約1ミクロン)とほぼ同程度である. したがって, 局所的なFRAPを行わせることが難しいため, エバネッセント光によるFRAPを試みた. この方式なら, ガラス界面より100ナノメートル近傍のみを退色することができる. 実際には細胞膜に固定されている蛍光スポット(モーター基部体構成タンパクにGFPを融合させたもの)と細胞膜中のGFP融合タンパクとを同時に計測し, レーザーの強度, 照射時間と退色の様子を比較してみた. その結果, 細胞膜中の蛍光スポットと細胞質側のGFP融合タンパク質とで励起光に対する退色の様子に差があることが明らかになった. 現在その原因, 細胞内環境, 隣接する蛍光色素同士の影響などを検討中である. バクテリア菌体内部における蛍光の定量的評価はかなり困難を極める. その菌体の大きさ自体が2マイクロメートルと一般的にイメージングで使用される細胞(10マイクロメートル程度)に比べてかなり小さいこと. さらには菌体の形状が俵型をしており, 光学的に不向きなことなどが原因である. そのため, バクテリア菌体内部での蛍光の位置(高さに影響する)などを踏まえて, 定量的な評価を行っている.
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