平成20年度は、桿体と錐体の違いを生み出すメカニズムの研究を中心に行い、下記の成果を得た。 1.錐体と桿体でのcGMP合成活性の違い 桿体と錐体の電気的応答が元のレベルまでに回復するには、新たなcGMP合成が必要である。錐体での応答の戻りの傾きは桿体のそれより、より急峻であるので、錐体ではcGMP合成能が桿体での合成能よりも高いことを予想した。精製した桿体と錐体とを使って合成活性を測定した。その結果、実際、錐体の方で合成活性がはるかに高いことが明らかになった。これは錐体におけるcGMP合成活性を調べた最初の成果であり、錐体の電気的応答をうまく説明できる点において、重要な知見である。 2.錐体における高いレチノイド代謝活性 視物質が光を受容するとオールトランスレチナールが生成し、そのオールトランスレチナール(アルデヒド)は還元されてオールトランスレチノール(アルコール)となる。明るい所で働く錐体では短時間に大量の視物質が活性化され、大量のオールトランスレチナールが生成する。アルデヒドであるレチナールは毒性が高く素早く除去する必要があるので、錐体ではアルコールへの還元は素早いと推測される。そこで、レチナール還元酵素活性を測定したところ、錐体では還元活性が非常に高いことが明らかになった。錐体でのレチナール還元活性を測定した最初の例である。さらに、本研究では、錐体に特異的に存在するレチノールからレチナールへの酸化反応(ALOL couplingと名付けた)があり、これが錐体で視物質の再生に重要な役割を果たしていることを初めて示した。レチノイド代謝研究における、新たな領域を開拓した重要な知見である。
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