研究課題
平成21年度は下記の成果を得た。(1)錐体と桿体でのcGMP合成活性の違い:桿体と比べると錐体での方がcGMP合成活性ははるかに高いことを明らかにしている。これは錐体に発現しているcGMP合成酵素(GC-C)の1分子あたりの活性が桿体で発現している酵素(GC-R)より2倍高いことと、発現量が錐体の方が20倍高いことに理由があることが明らかになった。実際の細胞内ではこの活性がGCAPによって制御される。GCAPの発現量と酵素キネティクスから細胞内でのcGMP合成酵素活性を推測した。その結果、錐体内cGMP合成の活性調節の幅は桿体でより10倍程度も大きいと推定された。この結果によって、錐体での光応答の高い時間分解能と、錐体の方がより広い光強度の範囲で明順応できる分子メカニズムの一つが明らかになった。(2)錐体における低いホスホジエステラーゼ活性化効率の分子メカニズムの検討:錐体ではトランスデューシンによるホスホジエステラーゼの活性化効率が低いことを明らかにしている。そのメカニズムを明らかにする目的で、精製した桿体トランスデューシンが桿体と錐体のホスホジエステラーゼを活性化する効率を調べた。その結果、桿体と錐体のホスホジエステラーゼは桿体トランスデューシンによって同等の効率で活性化されることが明らかになった。このことから、錐体での低いホスホジエステラーゼの活性化効率は錐体トランスデューシン側に理由がある可能性が考えられる。(3)明るい所で大量に生成する褪色産物の処理:前年度、錐体には新規のAL-OL反応と名付けた反応経路が存在し、槌色産物から有効に視物質の再生が起こることを明らかにした。今年度はその反応に与る蛋白質をクロマトグラフィーによって同定する試みと基質特異性を明らかにすることを試みた。その結果、活性を有する画分を確認すると共に基質特異性に関する予備的な知見を得た。
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Proceedings of the National Academy of Sciences, USA
巻: 106 ページ: 11788-11793