研究課題/領域番号 |
20370062
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
片岡 幹雄 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (30150254)
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研究分担者 |
上久保 裕生 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (20311128)
山崎 洋一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (40332770)
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キーワード | 動力学的転移 / 非天然構造 / 核酸分解酵素 / 中性子非干渉性散乱 / 平均二乗変位 / 水和水 / 動力学の階層性 / タンパク質動力学 |
研究概要 |
蛋白質が機能を発現するためには、固有の立体構造の折りたたまれる必要がある。折りたたまれることにより獲得される物性が、蛋白質と単なるポリペプチドとの違いをもたらしていると期待される。我々は黄色ブドウ球菌核酸分解酵素(SNase)を用いて、生理的条件下では折りたたまれていないが酵素活性を有する変異体(Δ137-149)の作製に成功している。Δ137-149は、天然変性蛋白質のモデル系とみなすこともできる。野生型(折りたたまれている)とΔ137-149(折りたたまれていない)を用いて、蛋白質ダイナミクスに対する構造状態の効果を中性子散乱により調べた。野生型とΔ137-149の水和試料および脱水和試料について、異なるエネルギー分解能の分光器4台を用いて、中性子非干渉性散乱実験を様々な温度で行い、平均二乗変位(MSD)の温度依存性を求めた。4nsの分解能では、水和試料に対して、MSDの温度依存性に構造状態による差はほとんど観ることができなかったが、脱水和試料については明確な差が見出された。脱水和試料では、140Kにのみ動力学転移が見られる。転移後のMSDの増加率はΔ137-149の方が大きく、折り畳みによって蛋白質が硬くなることが示される。水和試料では、新たに240Kに転移が生じるが、構造状態には依存しない。しかし、分解能400psの分光器でのみ、系統的に構造状態による差が見出された。以上の結果、生理的条件下での蛋白質の動力学は、主に水和水に支配されているが、動力学の階層性は構造状態に依存することが明らかになった。
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