データベース中の大量のタンパク質立体構造データを用いて、タンパク質が基質と結合したときにどのように立体構造を変化させるかを、網羅的に解析・分類し、基質結合→構造変化の因果関係の一般的な論理(ルール)を同定する。その論理(ルール)に基づいて、基質非結合状態の立体構造から、基質結合状態の立体構造を予測する。最終的に、データベース中にある可能な限り多くのタンパク質について、基質結合→立体構造変化→反応という機能発現の動的な過程を理解することを目的とする。この目的に従って以下のふたつの研究を行った。 1.立体構造変化データベースの構築とその解析 基質結合状態と非結合状態の立体構造情報からなる2次データベースについては、度重なるデータセットの再定義を繰り返してきたが、ようやく現状での完成版をつくることができた。とくに、非結合状態では座標値がなく、結合状態で座標値が定義される天然変成タンパク質のデータを付け加え、より完壁なものとした。そのデータベースを用いた解析もほぼ終了した。 2.線形応答理論と二面角系ダイナミクス 二面角系の線形応答理論を作る過程で、二面角系ダイナミクスの問題に行きあたった。この問題は、球状構造を維持するために、二面角は常に補償的な相関を持った複雑な運動をするところにある。これを、二面角系線形応答理論で用いた考え方をもとに二次のレベルで解析し、球状である制約が、ポテンシャルの形状とdr/dθの二乗で表現されるメトリックが反相関をもたらすことによって起こることを明らかにした。
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