蛋白質の細胞内フォールディングを介助する分子シャペロンとして知られる、大腸菌のシャペロニンGroELには、本来のATP結合部位の外に第二のATP結合部位の存在することが、われわれの最近の研究により明らかとなりつつある。本研究では、この第二ATP結合部位を、蛍光エネルギー移動、光親和性標識、質量分析、アミノ酸配列分析などの手法を用いて同定する。ATPによるGroELのアロステリック転移の速度論的解析を行い、第二ATP結合部位を考慮に入れたアロステリック・モデルを構築すると共に、GroELの分子シャペロン機能において第二ATP結合部位がどのような役割をはたしているかを明らかにする。以下の研究を行った。 (1)光親和性標識によるATP結合部位の同定:アジ化ATPアナログによる光親和性標識、蛋白質分解酵素による分解産物のHPLC解析、アミノ酸配列分析、質量スペクトル解析によって、光親和性標識されたアミノ酸がTyr360であることが明らかとなり、第二ATP結合部位はこの近くにあることが期待される。今後、第一ATP結合部位の光親和性標識、Mg^<2+>有無の影響から結合特異性の確認などを行う必要がある。 (2)アロステリック転移に及ぼすK^+の影響:今回、ATP結合によるGroELのアロステリック転移と第二ATP結合部位へのATP結合は溶液中のカリウムィォン(K^+)濃度に大きく依存することも明らかとなった。今後、アロステリック転移に及ぼすK^+濃度の影響を定量的に調べることが必要である。
|