遺伝子の転写・pre-mRNAスプライシング・mRNA核外輸送など、従来は個別に研究されてきた諸反応が、生体内では互いに連携もしくは共役しながら進行していることが近年明らかになりつつある。しかし、その分子機構には未だ謎が多い。本年度の研究では、分裂酵母mRNA核外輸送変異株ptr7の原因遺伝子がmRNAの3'末形成複合体因子Clp1をコードしていることを明らかにし、mRNAの3'末形成と組mRNA核外輸送の間には密接な連携機構が存在していることが示された。ptr7変異株では制限温度下でmRNAの3'末に付加されるpoly A鎖の伸長が観察され、そのことが輸送阻害に関連すると推定された。また、ptr7変異株では輸送阻害に加えて、pre-mRNAスプライシングにも阻害が見られた。更に、分裂酵母スプライシング変異株prp1〜prp14においてmRNAの細胞内分布をin situ hybridizationによって解析した結果、prp1とprp3では制限温度下でmRNAの核蓄積が検出され、スプライシング反応とmRNA核外輸送との間の連携機構の存在が示唆された。また、核膜孔複合体因子Nup85遺伝子に変異をもつptr5変異株とprp8などのスプライシング変異の間に、合成致死等の遺伝学的相互作用があることを明らかにした。これらの結果から、核膜孔複合体を介したスプライシングとmRNA核外輸送の連携機構の存在が初めて示唆された。
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