研究概要 |
TATAボックス/イニシエーター等のコアプロモーター構造を認識する基本転写因子TFIIDは、転写開始前複合体のアッセンブリーに際して核となる分子であり、転写調節因子から受け取った信号を転写量の増減へと変換する上で中心的な役割を果たす。これまでに多くの研究が行われてきたにもかかわらず、TFIIDがどのようにして転写開始点近傍のコアプロモーター配列(CE)を認識し、特定の塩基対からの転写を誘導するのか、その分子機構の詳細は依然として不明のままである。そこで我々は、全遺伝子の約80%を占めるTATA-lessコアプロモーターにおけるTFIIDの役割を明らかにすることを主な目的とし、出芽酵母由来の代表的なTArA-less遺伝子であるRPS5のコアプロモーターに関して詳細な機能解析を行った。その結果、本コアプロモーターには少なくとも9個以上のA,Tに富む短い塩基配列(各々が4~6ヌクレオチドから構成される)が重複した機能を有するCEとして含まれていることが明らかとなった。また各CEには配列特異性はなく(ただしAr-richであることが重要)、転写の方向性についてもその特異性は低いものであった。しかしながら全体(9個)をセットとした場合には強い転写方向性を示したことから、これらのCEは複数個が協調的に働くことでTFIIDの認識配列としての機能を発揮するものと考えられる。現在はTFIIDがこれらのCEをどのように認識するのかをin vitroで調べるとともに、出芽酵母における転写開始機構として近年提唱されているスキャニングモデルの検証も合わせて進めている。
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