これまでに実用化しつつあった哺乳類培養細胞における化学修飾を施したアンチセンス・キメラオリゴヌクレオチドによる細胞核内RNAノックダウン法の至適化を行った。さらにこの方法を用いたヒトオーファンsnoRNA(boxC/D型、boxH/ACA型)の特異的なノックダウンを試み、新たに20種類のオーファンsnoRNAの効率良いノックダウンに成功した。単一配列のアンチセンスオリゴヌクレオチドによるアーティファクトの可能性を除外するために、2種類のオリゴヌクレオチドによるノックダウンを行いU97 snoRNAとHBII295 snoRNAについて成功した。オーファンsnoRNAがmRNAを標的とすることが実際に細胞内で可能かどうかを人工的なレポーター遺伝子の3'UTRやイントロンブランチ部位領域にオーファンsnoRNAの標的配列を組み込んだ発現プラスミドを構築し、オーファンsnoRNAがレポーター遺伝子の発現に影響を及ぼすかどうかを検討したが、人工遺伝子の系では発現変動は見られなかった。このことはオーファンsnoRNAがmRNAを標的にするためには、mRNA側にもsnoRNAと会合するための何らかの特殊なメカニズムを利用している可能性がある。その可能性としてRNAの細胞内局在場所が重要な役割を果たしている可能性が浮上した。そこでオーファンsnoRNAを細胞分画とRNA-FISHによって細胞内局在を検討したところ通常のsnoRNAと同様に核小体に特異的に局在していることが明らかになった。このことから標的となるRNA分子も核小体に局在している可能性が高いことが推測され、人工的に構築したレポーター遺伝子では核小体に局在できなかった可能性が高いことが明らかになった。
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