研究概要 |
これまでに、活性化Ras遺伝子の構成的発現により、正常線維芽細胞を細胞老化誘導した場合、リンカーヒストンH1の消失とHMGA2蛋白質の増加を伴うヘテロクロマチン(SAHF,Senescence-associated heterochromatin focus)形成がおこることを報告してきた。今回、このようなSAHF陽性細胞においては、G蛋白質Ranが、正常であるべき核内ではなく細胞質に局在異常を示していることが明らかになった。特に、正常線維芽細胞に種々の容量の過酸化水素処理を行うと、容量の増大に伴って、Ranの局在異常の程度、持続が亢進し、それは細胞老化誘導の程度と相関した。これらのRanの局在異常は、核内DNAのヘテロクロマチン化により、Ran GEF(guanine nucleotide exchange factor)であるRCC1の機能、局在が異常になるためであると考えられた。 一方、東京大学先端科学技術研究センターの油谷教授との共同研究で、マイクロアレイを用いて細胞老化誘導時の遺伝子発現プロファイルの変化を解析した。その結果、細胞老化誘導に、NF-kappaB経路の活性が重要である可能性が示唆され、実際に、老化細胞における同経路の活性化を証明した。今後、いかに同経路が活性化されるのかを明らかにする予定である。 さらに、既に報告した老化細胞におけるリンカーヒストンH1の消失の分子機構をさぐるため、プロテアソーム阻害剤であるMG132で処理すると、H1の消失が有意に阻害されたことから、プロテアソームが関わることが示唆された。
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