研究概要 |
研究の目的:血管内皮細胞は、細胞間の接着と乖離を見事にコントロールすることによって、発生あるいは臓器形成の際に円滑な血管新生を成立させている。血管内皮細胞の乖離・接着のメカニズムを接着因子VE-cadherin、PECAM-1)と、血管内皮細胞特異的なチロシンキナーゼ調節系(angiopoietin(Ang)-Tie受容体系・VEGF-VEGF-R受容体系)のシグナルを明かにすることで理解することを目的として本研究を開始した。 Ang1-Tie2系が細胞-細胞間接着に依存して局在を変化させ、Tie2の下流の細胞内情報伝達系を変化させていることを突き止めた。Tie2は細胞間接着(+)では細胞-細胞間接着部位に集積するのに対して、細胞間接着(-)細胞では細胞-基質間接着部位にAng1とともに局在することがわかた。この結果は、細胞間接着部位ではAng1によるトランス結合によりTie2を局在化して、基質にAng1がTie2を繋ぎ止めることで同部位への集積を誘導していることを証明した。さらに、Ang-Tie2の細胞間接着部位あるいは細胞-基質間接着ぶいへの集積にはVE-cadherin,PECAM-1は関係がまったくないことを二つの分子のノックダウンによって明らかにした。 血管形成とくに発生における血管新生でのAng1,Ang2,Tie1,Tie2の機能を明かにするためにZebrafishを用いた血管の可視化による機能の検討を開始した。ZebrafishはMyr-GFPを血管内皮細胞特異的に発現する系をトランスポゾンを用いてゲノム内に組み込むシステムで構築を始めた。野生型のZebrafishでAng1,Ang2,Tie1,Tie2のノックダウンをモルフォリノにより行い形態変化を観察したが、著明な血管構築の異常を認めなかったことから哺乳類とは異なるAng-Tieシステムが血管新生を調節している可能性が示唆された。
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