研究課題
全生物の共通祖先が存在しているかどうか、またその数や性質に関しては議論がある。本研究では、三つの共通祖先(全生物、真正細菌、古細菌)遺伝子を再生し、その解析を行う。その解析から、1)翻訳系、複製系に関して古細菌の祖先と真正細菌の祖先酵素を推定し全合成することから、古細菌の祖先と真正細菌の祖先がどの程度の温度に生育し得たかに関する情報を得る。2)さらに、代謝系酵素を材料として全生物の共通祖先の遺伝子を推定し全合成することから、全生物の共通祖先がどの程度の温度に生育し得たかに関する情報を得る。まず、研究対象とする酵素遺伝子の配列をもとにデーターベースを検索して相同な配列を探し出した。配列のアライメントを行った後、立体構造を考慮したアライメントの修正を行った。最尤系統樹を作成し、得られた系統樹を用いて祖先配列を推定した。次いで、推定した遺伝子のアミノ酸配列を大腸菌の高使用頻度を用いて逆翻訳した。全体を20塩基ほど互いに重複する100-120塩基のオリゴヌクレオチドに分割し発注した。これらを混合してPCRにより遺伝子合成を行った。配列を確認した祖先型遺伝子を、発現ベクターに導入し、適当な宿主で発現し、発現タンパク質を精製した。DNAジャイレースBサブユニットおよびそのN末端ドメインの真正細菌祖先型の酵素の推定、遺伝子合成、発現、精製を行った。その耐熱性を調べたところ、BサブユニットのN末端ドメインが80℃以上の安定性をもつことが明らかとなった。また、Gly-RS(グリシルtRNA合成酵素)の古細菌祖先型酵素遺伝子の全合成とIPMDH(イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素)全祖先型酵素遺伝子の全合成を完了した。以上、真正細菌の複製系が高い耐熱性をもつことが明らかとなった。今後、古細菌の翻訳系および、全生物の共通の祖先の代謝系遺伝子に関する情報を得るための遺伝子作製を行った。
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