研究課題
本研究では、縄文時代から弥生時代にかけての古人骨を対象に、古病理学的研究、古人口学的研究、同位体分析による離乳期推定法を組み合わせることで、渡来系弥生集団の人口増加に穀物由来の離乳食の利用が寄与しているという作業仮説を検証することを主な目的としている。そのために、以下の研究を行った。1.古病理学的な研究では、縄文時代におけるエナメル質減形成のデータ採取を行った(連携研究者:澤田純明)。2.古人口学的研究では乳幼児死亡率の推定方法の改良のため、近世の堺市濠都市遺跡から出土した胎児骨・乳児骨で詳細な年齢推定を行った。また、乳幼児骨を多数包含している愛知県東海市・長光寺遺跡出土資料のクリーニング、副葬品の調査などを行った(連携研究者:長岡朋人・安部みき子・嶋谷和彦)3.同位体分析では窒素同位体比による離乳期推定法の確立するために、1960~70年代の乳幼児骨および乳製品における放射性ストロンチウム濃度のデータから、乳幼児骨における置換速度を推定し、新しい離乳期復元モデルを構築した。さらに同様のアプローチを、北部九州の渡来系弥生集団に対しても実施するため、具体的には、福岡県筑紫野市の隈・西小田遺跡から出土した弥生時代人骨について、乳幼児を中心に同位体分析のサンプルを採取した。4.縄文時代人骨の同位体に係る結果を中心に、日本人類学会骨考古学分科会シンポジウムとして「縄文生業の地域性と多様性をさぐる」を主催した。5.日本人形成に係る重要な人骨資料について、直接的に放射性年代測定を測定し、資料の帰属年代を確認した。今年度は、東大博物館所蔵の弥生時代の頭蓋骨と、沖縄県白保竿根田原洞窟から出土した人骨について、測定を実施したところ、後者は更新世後期の2万から1万6千年前の人骨であることが明らかになった。以上の研究データをもちより、考古学的側面から乳幼児の死因や埋葬形式を研究している連携研究者(日本歯科大学・奈良貴史)などと議論をするために、研究集会を実施した。
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American Journal of Physical Anthropology (印刷中(電子版公開))
Radiocarbon (印刷中(掲載決定))
Anthroplogical Science (印刷中(電子版公開))
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