研究課題
本研究では、縄文時代から弥生時代にかけての遺跡出土古人骨を研究対象として、これまで系統的に比較検討が行われてこなかった古人口学的研究とコラーゲンの同位体分析による離乳期推定法を組み合わせることで、渡来系弥生集団の人口増加に穀物由来の離乳食が寄与しているという作業仮説を検証することを主な目的とする。最終年度の平成23年度は下記の研究を実施した。1,古病理学的な視点から、エナメル質減形成の出現時期についての方法論的な見直しを反映して、あらたに縄文時代および弥生時代集団における幼少期の各種ストレス履歴を検討した。2.古人口学的な研究手法の改良として本研究で開発にとりくんだ、ベイズ推定を組み込んだ乳児死亡率推定法を用いて、あらたに縄文時代および弥生時代集団における乳幼児死亡パターンおよび死亡率を再検討した。3.先史時代の離乳・授乳習慣を推定するためのあらたな手法として本研究で開発にとりくんだ窒素同位体比の年齢別変動パターンの解析方法をもちいて、北海道の続縄文時代の有珠モシリ遺跡と、同じく北海道の中世オホーツク文化期のモヨロ貝塚集団の比較検討を行ったところ、有珠モシリ集団では妊娠期間中に母親が特殊な食事を送っている可能性と、初期乳児にも何らかの代替食品が与えられた可能性が示唆された。4.日本人集団の形成に関わる新たな資料として、沖縄県白保竿根田原洞穴遺跡から発掘された更新世後期から完新世初頭の古人骨資料について、残存するコラーゲンの炭素・窒素同位体比を測定し、氷期の寒冷な環境においてすでに離乳食などに転用可能な植物のデンプンがヒトによって利用されていた可能性があるかどうかを検証した。
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