研究概要 |
中枢神経機能,自律神経機能,体温調節機能などの生理反応に及ぼす光の質の影響と,それらを修飾する性格特性,形態的特性,行動特性などの個人の特性の影響について明らかにすることを目的として,本年度は以下の研究を実施した。 1.458 nmと550 nmの単波長光を朝と夜に暴露し,概日変化に及ぼす光の影響を検討した。12名の朝型・夜型中間タイプの被験者で検討した結果,α波減衰係数は朝より夜の方が高いこと,P300振幅は458nmで朝が夜より低く,550 nmでは夜が朝より高いことなどが認められた。 2.色温度,照度を組み合わせた4条件の光環境下で,8名の健康な青年男性を被験者として,足し算タスクおよびホワイトノイズ騒音(80dBA)を付加した時の生理反応を測定した。騒音暴露では心拍数,一回拍出量などに光環境の有意な効果が見出された。さらに被験者の性格特性による生理反応の差異を検討している。 3.赤色,青色,および白色光環境で健康な若年男性5名を対象に,運動負荷を与えて発汗を促し,その後,冷水循環スーツにより体温を下げてふるえを誘発した。直腸温の発汗閾値とふるえ閾値を求め,その差であるCore Interthreshold Zone(CIZ)を求めた。白色光のCIZは0.37℃と小さく,青色と赤色ではそれぞれ0.67℃,0.52℃と大きいことが明らかとなった。また,季節差が存在する可能性が示唆された。 4.睡眠解析を行うための実験システムの構築を行い,青色と赤色の単波長光および白色光を就寝前2時間に暴露し,睡眠中の脳波,筋電図等を測定した。光条件によって睡眠が質的影響を受ける可能性が示され,行動特性(朝型/夜型)の異なる被験者を用いて睡眠の質に関する交互作用を検討すべきであることが示された。
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