近年、種々の環境要因の中で特に光が、サーカデイアンリズムを通してヒトの生理・心理・行動に大きく影響する事が明らかにされつつある。自然光環境下において、高緯度地域の冬期にはうつ傾向を示すヒトが多くなることが知られている。その主要因は短い日照時間と低照度によるメラトニンリズムの乱れとも考えられている。今日の日本における、日中であっても人工照明に依存する都市の光環境は、人工的にこの高照度地域の冬期光環境を作っているのではないだろうか。また逆に、光が溢れる夜間の人工照明環境は、良質な睡眠に関与するメラトニンの分泌を抑制することが指摘されている。 本研究はこのような問題意識から、日常生活における光環境がもたらすサーカデイアンリズムへの影響を再考し、現代都市光環境の計画手法に新しい視点を提供することを目的としている。 本年度は、日常生活の中で「いつ」・「どのような光を」・「どの程度」受けたかを把握する手法の確立を行った。特に「携帯型分光照度計」の開発・改善を行い、波長分解能は50nm幅であるが携帯性に優れたタイプと、波長分解能は1nmであるがやや携帯性に劣るタイプの2タイプを設定した。これらを用いて、その特性と有効性の範囲を24名の被験者を用いて確認を行うとともに、メラトニンリズムとの関連性について予備的分析と今後の方向性を考察した。
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