近年、皮膚感覚に対して情報提示を行う触覚インタフェースの研究が盛んに行われている。しかしながら、ヒトの触知覚メカニズムに基づいた触覚インタフェースの設計指針は出揃っているとはいえない。本研究は、1ピンなどの固体を皮膚に当てることなく、各ノズルの噴流に強度と時間差を与えることにより、空気噴流だけで滑らかさや仮現運動感覚を生起させるアレイ型触覚ディスプレイを作成し、2指先の触覚の各機械受容器にかかる応力分布を有限要素法により求め、その応力分布を生じさせるよう触覚ディスプレイの呈示圧力を制御して、機械受容器の神経インパルス発火の状態と触覚との関係を実験的に調べ、3仮現運動感覚とファントムセンセーションをヒトが獲得する際の脳内の情報処理過程を、脳磁界応答を用いたニューロイメージング手法により明らかにし、ヒトの触覚による情報獲得・統合過程の生理的多型性を探るという目的で研究を行った。その結果、1に関しては実際に非接触型触覚ディスプレイを構築することに成功した。このディスプレイを用いてファントムセンセーションを使って図形を表示させ、平均78.3%の認識率で情報を伝達することができた。2に関しては実際に有限要素モデルを構築し、このモデルに指先形状を入力することで力学特性を推定させ、刺激提示時の皮膚変位と知覚反応を関連付けることができた。この2点に関して学会発表を行い、関連の研究者と意義のある議論を進め、論文執筆の準備を進めている。第3の目的であった触覚のニューロイメージングに関しては、多点刺激を示指に提示し、体性感覚誘発磁界を計測する実験を行い、仮現運動感覚と誘発磁界の活動潜時との関係をまとめ、学会で報告した。
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