本年度は(1)触覚による仮現運動感覚の明瞭性および知覚される運動速度の精度計測、(2)ファントムセンセーション呈示実験、(3)仮現運動感覚呈示時の体性感覚野の脳磁界応答計測の3点を中心に研究を行った。(1)については、特に仮現運動感覚に関して、人間の受容姿勢および提示方向の違いにおける速度識別の正確度を測定することで、触覚における速度情報の認知に適した提示手法について検討することを目的として実験を行った結果、個人ごとに速度情報を正確に感じ取る姿勢は異なることが示唆され、また、速度知覚の正確度は提示方向に依存しない可能性が示唆された。さらに、本実験における刺激条件下では、低速領域で正確な速度識別ができる可能性が示唆された。この成果はヒューマンインタフェース学会誌に採録が決定している。(2)のファントムセンセーションについては8種類の図形を3種の異なる経常提示手法を用いてその正答率を求めた結果、正答率は提示時間に大きく依存する結果となり、特に400msの時に93%以上の正答率を得ることができることが分かった。また、提示手法では辺区切り手法が最も適切に情報を伝達できることが分かり、人間工学会等で発表を行った。(3)の脳磁界応答計測については、2点刺激を用いて、提示時間を変化させることによって構築した明瞭度の異なる仮現運動刺激を示指に提示し、その際の脳磁界応答を計測した。その結果、触覚刺激提示による体性感覚野の反応後、運動野が触覚の仮現運動の明瞭度の高い刺激条件に強く関与する可能性が示唆された。本結果は日本生体磁気学会で報告をしたのをはじめ、論文にまとめる作業を行った。
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