研究概要 |
近年、皮膚感覚に対して情報提示を行う触覚インタフェースの研究が盛んにおこなわれている。しかしながら、ヒトの触知覚メカニズムに基づいた触覚インタフェースの設計指針は出揃っているとはいえない。 本研究は、(1)ピンなどの固体を皮膚に当てることなく、各ノズルの噴流に強度と時間差を与えることにより、空気噴流だけで滑らかさや仮現運動感覚を生起させるアレイ型触覚ディスプレイを作成し、2)指先の触覚の各機械受容器にかかる応力分布を有限要素法により求め、その応力分布を生じさせるよう触覚ディスプレイの呈示圧力を制御して、機械受容器の神経インパルス発火の状態と触感との関係を実験的に調べ、(3)仮現運動感覚とファントムセンセーションをヒトが獲得する際の脳内の情報処理過程を、脳磁界応答を用いたニューロイメージング手法により明らかにし、ヒトの触覚による情報獲得・統合過程の生理的多型性を探るという目的で研究を行った。本研究の成果は大きくは2通りあり,1つは新しい空気噴流による非接触型触覚ディスプレイをこれまでの5×5のタイプから12×12の高密度型のものを構築し,これを用いて数々の実験を行ったことである.開発したディスプレイを用いて,掌上に対して触錯覚現象の一つであるファントムセンセーションの明瞭度を実験的に求め,これまで定説となっていた掌上の二点弁別閾の傾向とは異なることを実証することができた.また,もう一つの大きな成果として,触覚による仮現運動感覚を提示することにより,大脳皮質内では実際に運動する際に賦活する運動野に神経活動が現れることを観察することができ,さらに移動間の明瞭さに応じて活動が変化することを初めて計測することができたことである,これらの成果はヒューマンインタフェース学会論文誌を始め,多数の国内外論文等に発表することができた.
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