研究課題
ニコチンアミドヌクレオチドは、植物のみならず、すべての生物の生存に必須な代謝物である。本研究では植物の分子シグナルとしての当該物質の代謝プロフィルにおける挙動を探るための研究を展開した。具体的には、イネやシロイヌナズナ(アラビドプシス)を用いて、NAD生産に関与する代謝系遺伝子を植物に導入し、育成した材料を用い、二酸化炭素や光強度に対する植物バイオマスの生産能力を比較検討した。また、アミノ酸、有機酸などの基本的な代謝産物の挙動を、質量分析装置を用いて解析した。本研究で示された様なメタボローム解析の例は、これまで報告例が少ない。得られた結果を総合すると、エネルギー源として有用な代謝系の活性化が、単子葉、双子葉植物で共通して存在することが明らかになった。特に、高二酸化炭素ストレス下では、窒素栄養条件が制限因子であり、炭素と窒素バランスが極めて重要であることを明らかにした。代謝系のシグナル分子として、デノボ合成により生産されたNADの重要性が指摘された。また、イネとアラビドプシスでは、光条件に応答した代謝変動に生理学的な違いのあることが判明した。即ち、強光適応植物であるイネは、ストレス条件でも効率的な光合成能力を示すことがデターとして示された。このような反応は、双子葉植物アラビドプシスでは観察されなかった。今後、以上の知見を土台として、植物分子育種の有効な基盤を提示し、現場への応用を推進する計画である。
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