本研究は、全オオムギ染色体(1H~7H)に多数のオオムギ染色体断片系統を育成する(各染色体につき50系統以上)と同時に、それらが速やかに多くの研究者に利用されるよう、オオムギ染色体断片の存在を簡単なPCR解析で同定できる方法の開発を目指すものである。平成21年度当初に計画した下記の実施計画について実績の概要を報告する。 1)2H染色体断片系統の数を増やすため、パンコムギ+2H"+Gc'系統に正常パンコムギを戻し交配し、その子孫から2H染色体断片を持つ約70系統を得た。一部の系統はさらに選抜が必要な系統あったので、当初予定していたPCR解析は次年度に一括して行うことにした。 2)4H染色体については、選抜した染色体断片60系統と4H特異的な93のESTマーカを用いてPCR解析を行い、4H染色体の細胞遺伝学的地図を作成した。この成果は論文として公表した。 3)6H染色体については、パンコムギ+6H"+Gc'系統に正常パンコムギを戻し交配して1000個体以上の子孫を得た。この子孫からGISH/FISHにより6H染色体断片を有する個体の選抜を開始し、次年度も選抜を継続する。 4)パンコムギ+1H'+6H'+Gc'個体にパンコムギ+1H"+6H"個体の交配を試みたが、両親とも花粉不稔が強く交配できなかった。そこで、パンコムギ+1H"+6H"個体にパンコムギ++6H"+Gc'個体を交配し、パンコムギ+1H'+6H"+Gc'個体を得た。この個体にCSを交配して子孫を得た。 5)当該研究には予定していなかったが、ライムギの1R染色体についても染色体断片系統が育成できたので、オオムギ、ライムギが同じグループに属し近縁であることを考慮して、本研究の一環としてPCR解析を行い、細胞遺伝学的地図を作成し、成果を論文として公表した。
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