研究概要 |
これまでのイネ高温不稔研究で,高温不稔耐性に密接に関係すると考えられてきた4つの形質,葯の形態,穂温,開花時刻および群落内での穂の高さ,の違いが高温高湿度条件下において不稔の発生にどの程度関わっているかを評価するために,イネの高温不稔が頻発する中国湖北省荊州市の水田圃場において,イネの栽培実験を行った. (1) 葯の形態,穂温,開花時刻が異なる水稲9品種を乱塊法(2ブロック)に基づき作付け,受粉の状況を調査した.実際に,穂温には品種間で最大0.8℃,開花時刻には2時間程度の差異が認められた.また,葯基部に生じた裂開の長さの変異は,260〜490μmであった.葯基部に生じた裂開の長さと受粉の安定性との間には強い相関関係が認められたが,開花時刻や穂温と受粉の安定性との間には相関関係が認められなかった.高温・高湿度環境下において,大きい葯基部の裂開の受粉を安定させる効果が確認された. (2) 出穂期の穂が群落の深い位置にある中国スーパーライス品種両優0293に対し,出穂期に穂の高さよりも高い位置にある葉をすべて剪葉する処理を施し,受粉への影響を調査した.剪葉により受粉が安定し,柱頭上での発芽花粉数が十分な詠歌の割合が増した."スーパーライス"では,登熟期の光合成能力を高めるために上位3葉は長く改良されている.この実験の結果は,スーパーライスのこの草姿が,高温不稔の発生を助長している可能性を示唆している.
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