研究概要 |
4年間の研究期間に,以下に示す4つのイネの高温耐性関連形質の改良に関する効果を評価する. (1)開花時における葯基部の裂開長拡大の効果感受性品種に葯の裂開を大きくする遺伝子を導入した系統の高温不稔多発地域での試験栽培を通じて,耐性向上の効果を明らかにする.また,裂開に関与する個々の遺伝子がどのようなメカニズムにより裂開を大きくするのかを形態的な側面から検討する. (2)早朝開花の効果早朝に開花する品種を収集し,高温不稔多発地帯での試験栽培を通じて,どのような条件で早朝開花による高温回避の効果が発揮されるかを理論化する. (3)低穂温の効果穂温については,すでに品種間差異の存在が明らかにされており,さらに,穂温決定のプロセスに基づいた穂温の予測モデルが作成されている(研究業績1).栽培試験では,実際に高湿度・無風・群落条件下で穂温にどの程度の品種間差異が生じるかを確認する. (4)穂に対する葉の遮蔽の効果剪葉,間引きなどの処理を群落に施すことにより,葉による遮蔽が高温不稔の発生に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにする. (5)稔実モデルの作成とモデル解析i~iv)で得たデータを下に,気象条件から高温不稔の発生を予測するモデルを作成し,4つの形質を改良した場合の効果を評価する.高温不稔が多発した2003年の長江流域の気象データ,品種ごとの稔実データを用いてモデルの精度を検証する.さらに,温暖化時に予測される気象シナリオの下でどのような形質が有効かを明らかにする.
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