研究概要 |
トウモロコシ種子根軸上の部位別に,糖類含有量,スクロースの代謝に関わる酵素の活性およびin situでの局在性について調査した.スクロース,グルコース,フルクトースの含有量は根端から0-1cm部位で他の部位よりも3から5倍高かった.インベルターゼとスクロースシンターゼの活性も根端から0-1cm部位で他の部位よりも高かった.インベルターゼの局在性は,種子根細胞伸長部位において検出された.スクロースシンターゼの局在性は,種子根伸長部位と側根の根端で検出された.これらの結果は,スクロースが種子根伸長部位や側根根端に輸送され,インベルターゼやスクロースシンターゼによってグルコース,フルクトース,UDP-グルコースに代謝されることを示していた.スクロースは,エネルギー源や細胞壁の炭素源,または細胞伸長のための適合溶質の源となることで,根系形成に寄与していると考えられた.トウモロコシの側根原基形成部位における,浸透圧ストレスによって生じる遺伝子発現の変化を捉えるためにマイクロアレイ実験を行った.ストレス条件下では輸送に関する遺伝子に発現上昇の傾向が見られた.またストレス応答およびオーキシン関連遺伝子の発現にも上昇傾向が見られた.オーキシンの作用を高めることが知られているジベレリンに関連する遺伝子の発現も上昇傾向にあることから,ストレス状況下の側根では,オーキシンの活性が高まっている可能性が示唆された.植物体内におけるオーキシンの分布に影響を与えるとされるアグロバクテリウム由来の6b (AK-6b)遺伝子をデキサメタゾン(Dex)誘発性のプロモーターつなぎ,タバコおよびイネに導入した.タバコについてはT2世代を得ることが出来た.その芽生えの解析から,野生型の根が主根系であるのに対しDex存在下の組み換え体ではひげ根系に近い形態を示すことが明らかとなった.
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