研究課題/領域番号 |
20380013
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上野 修 九州大学, 農学研究院, 教授 (70414886)
|
研究分担者 |
千徳 直樹 農業生物資源研究所, 光環境研究ユニット, 主任研究員 (10370660)
|
キーワード | 植物 / 農林水産物 / 作物生理 / 作物形態学 / 光合成 / イネ / 野生イネ / 葉構造 |
研究概要 |
23種からなるイネ属(Oryza)は熱帯・亜熱帯地域を中心に分布する農業上重要なイネ科植物で、その生育地は明るい湿地から半陰地まで多様である。本研究では、イネ属植物における葉の構造と機能特性の変異の実態を明らかにして、光合成を制御している要因を検討する。 イネ属21種25系統について葉の準超薄切片を作成し、葉肉細胞(MC)と維管束鞘細胞(BSC)の分化における同調性を検討した。両細胞のサイズ、並びに含まれる葉緑体のサイズと個数を測定し比較したところ、イネ属全体としてはMCとBSCの形態分化はある程度同調して制御されているが、BSC葉緑体のサイズはこれとは異なった制御下にあることを明らかにした。昨年度に引き続き、野生イネ8種について光合成及び光呼吸関連酵素の活性を測定し、いずれもC3植物に典型的な活性値を示すことを見出した。この結果、イネ属植物の光合成型はいずれもC3型であり、C3-C4中間型は存在しないと結論した。イネ属21種45系統を昨年度と同じハウス内で育成し、光合成ガス交換特性を測定した。その結果、光合成速度(Pn)の変異には気孔伝導度(Gs)、葉緑索含量及び比葉重が関わっていることを見出した。また気孔形態特性がPnやGsの変異に関与していることを明らかにした。野生イネの中には栽培イネと同程度のPnを示す種があったが、これらは栽培イネとは異なった要因により高いPnを発揮していると考えられた。葉の横断・縦断切片を用いて葉肉組織における二酸化炭素の物理的拡散に関わる形態的パラメータを測定し、Pnとの相関を検討したところ、PnとMC層数との間に正の相関を見出した。一方、Pnと細胞間隙率やMCサイズとの間には相関は見られなかった。イネ属の2倍体種は4倍体種に比べMC層数と葉身凹凸率が高く、MCサイズと細胞間隙率は小さいことを明らかにした。
|