研究概要 |
セイヨウナシは樹上では完熟せず,収穫後の追熟を行うことによってはじめて可食状態になる果実である。この原因として,樹からの物質等何らかの要因すなわちtreeファクターが成熟を阻害していると考えられている。そこで本研究では,樹上完熟性をもつといわれている'ミクルマス・ネリス'を供試して,樹上成熟特性を調査するとともに,得られた結果を前年度に供試した樹上完熟特性をもたない'バートレット'と比較した。 その結果,'ミクルマス・ネリス'樹上成熟区ではエチレン生成量が10日目から増加し始め,15日目にピークに達した。果肉硬度はエチレン生成量の増加に伴い,急激に低下し,15日目に適食レベルに達した。一方,落果率はエチレン生成量がピークに達した15日目まで0%で推移した。このことから,'ミクルマス・ネリス'果実はエチレンが生成されても落下しにくい特性をもつことが示唆された。また,'ミクルマス・ネリス'は,前年度に実験した'バートレット'と同様に,果実離層上部の環状剥皮処理による樹上成熟促進効果が認められた。一方,得られたメタボロームデータを主成分分析により解析した結果,追熟果実と樹上完熟果実間で成熟中の代謝に違いがあることが判明した。 次に,強い単為結果性を示す'ラ・フランス'を供試して,単為結果した果実と受粉した果実を作出し,果実成熟における種子の役割について検討した。その結果,種子の有無は,果実の発育に影響をおよぼしたものの,果実の追熟にはほとんど影響がみられなかった。
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